昼と夜のさかい目②

「おらー、でけたぞー!おまえら。」
「おお!うまそうだなぁはなみち!」
「あ、また寝てんのか、キツネは。ったく。」

花道、言うてやるなや。しかし花道も起こそうとはせず、そのまま、わざわざ流川のとなりに移動して座る。
愛だねえー。

「んだよ、チュウ!じろじろ見てっと、やけどすっぞ!おりゃ!」
「アチッ!ばか!とばすな!もったいねぇ。」
ひゃひゃひゃ!
「花道ーこれうめーぞー」

何を食ってもおいしそうな高宮がそう言う。

「そーかそーか。どんどん食いなさいね、キミタチ。あ、高宮以外は。」
「あんだとー」
ワハハハ

うーん、久しぶりに集まってもヤッパリ楽しいな。

それにしても―――すごいのはこの流川だよ。
この騒々しさの中でも寝てられるってのが―――大物だよなぁ。あらかた食べ終わって、さぁ、みんなで茶でもすすりますかというときになって、流川がようやく起きた。

「起きたか。」

花道が少しだけ首を動かして、静かに尋ねる。

「ん。」
「ほれ食え、これはテメーが食ってもいいやつだ。」
「ん。」

花道が高宮を阻むために、別の皿にわざわざよそっておいてやったんだぜ。
愛だよなぁ~
ほんわかしてるところへ、しかし、

「―――ソレ、オレのハシ。」

突然、大楠を指差して、そんなことをいう。

「ああ?んだよ、オレのだよ」
「おれンだ。」
「おれの―――ってゆーか!みんなんだよ。」
「おれのになった。カエセ」

おいおい、キミタチ、箸の話だよな?

オレんダみんなのだと繰り返し、一向に埒があかない会話を断ち切ったのは花道のひとこえだ。

「だあ!ルカワ!てめぇのハシはこれだ。これで食え!」

不服げに、じろっと花道をみて、仕方なしに、おいてあったハシで食べ始める。

わりぃなぁ。
花道をとられて軍団の中で一番拗ねてンのは大楠なんだよ。

「ソレ、オレの湯飲み。」

と、今度は、洋平が飲んでた湯飲みをさす。
ぶっ、とふきだした洋平は、しかし冷静だ。「ええとぉ・・」と台を拭きながら、

「わりいわりい、あらってくっか?このままでもいいか?」

などと聞いている。ホントに洋平は人間ができてる。ただ、この場合そのできてるっぷりは―――いろんな意味で、逆効果だよ。

「アラエ。」

と言ったルカワに花道が、げんこつをくらわして、

「てめーはこれで飲むんだよ!」

と叫んでる。ほらな、逆効果。
そんな、花道、ツバまで飛ばさんでも。
流川、かわいそうにな。
げんこつ食らったところを、「ってえ・・」、とさすりながら、花道をにらみつけている。そして、そこへ

「いっただきー」

 高宮が、ルカワの肉を一枚かっさらった。
ついに切れた。というか、切れるべくして切れた流川が「帰る」と一言、言い放ち、かばんを持って立ち上がった。おれはむしろ、よく耐えたと思う。 花道はチラッと流川を見たが、しかし、すぐに視線を戻して、

「帰れ帰れ、わがままキツネめ!」

なんてことを言ってる。
いや、いまさらオレ達にかっこつけんでも。かわいそうなことしたと思ってるくせに。

花道の言い草に、さらにムカっときたらしい流川は、花道の頭にかばんをわざとガコンとあてて、そのまま帰っていった。
途中、高宮の座布団を思いっきり引っぱって高宮をごろんと転がしたことを付け加えておく。
「なんだなんだぁぁ?」
高宮が叫んでいる―――。

いやー・・高宮、お前が悪い。

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