クワガタくん

・・・・・おーもーいー

両手で抱えたダンボール箱ふたつに、軽く頭突きをする。

僕って、こーゆーのすぐ頼まれるんだ。
見た目、気弱に見えるのかな。
昔からこんな役回りばっかりだ。

いまさらだけど、なんか・・悔しい。

部活に間に合わないよ。

「よお、1年。」

その声は、桜木くんだな。

「桑田だよ。」

「おう、クワガタ。あにやってんだ。オメー、部活は。」
「クワタだってば。」

あ、なんかイラッとした声が出てしまった。

「先にこれ体育準備室に片さないといけないんだよ」
「ほぉ?1年だというのに感心感心」

「っていうか、君も1年だろ。」

ああ、お約束を、今更なのに突っこんでしまった。
これじゃ、やつあたりだよ。
でも・・
でも、そうだよ。同じ1年なのに。

横目で桜木君を見る。

桜木君は立派なからだして堂々としてて強そうで・・
桜木君だったらこういうこと押し付けられたり しないんだろうなぁ。

「なんでぇ・・・軽いじゃねーか。」

「あ・・」

「ほら、テメー、さっさと着替えてこいよ。」

「いいの?」

「遅刻したらゴリがうるさいからな。」

「さくら・・」

「急げって!!」

「ありがとう!!」

軽くなったのは、ダンボールのことだけじゃなくて。
身軽になったぼくはそのまま部室に向かって駆け出した。

「ろうかを走るなー」

途中で先生に注意されたけど、
「はーい」と答えたんだけど、
走っちゃだめだって分かってたんだけど、
それでもぼくは、とまらなかった。

花道を流川くん以外の人の目線から語ってみたかったのでした。