五十人に振られ続けた花道が、すわ五十一人目かというところで、流川に拾われたというか、拾ったというか。 表現の難しいところだよ、ほんとにな。 報告があって、そりゃ少しばかり驚いたが、けれど、花道らしいなと思った。花道は昔っからああいうおじょー様タイプに弱いんだ。 性別はおいといてだな、この際。 それに、おれは、けっこう好きだよ?流川って。 あいつにならいいかもな、って思ってるんだ。
今日はひさびさに花道んちに、おれたち桜木軍団が集合だ。
ついでにおれたちを、「どあほう集団」と呼ぶ流川楓も加わって、夢の共演だ。
夢―――んー悪夢かもなぁ。
ほれ見ろ。
さっきから不機嫌きわまりない顔してるよ。
花道が洋平につきっきりだからな。
オレ達軍団が集まるときは、たいがい花道が料理をつくってくれるんだけど、花道は、大雑把な顔と性格している割に、うまいわけよ。料理好きみたいだしな。好きにならざるをえなかったってやつもあるかも知れねえが、そりゃまた別の話だ。 更にまぁ、もう当然と言えば当然だが、そこに洋平も加わる。洋平がまーた、ホントなんでも出来るんだよなぁ。 花道に色々教えてやりながら、二人でつくって出来たもんを、おれたちがいただくんだ。 今日も、オレたちが部屋でくつろいでる間、花道と洋平が、台所だ。
「おぁ!よーへい、なんだぁその技。」
「こーやるとおいしくいただけるんだよ。」
「さすがだなあ!よーへいは!」
のどかだろー?
な。
流川の殺気さえなけりゃ、な。
お、立った。
参戦か?
さすがオフェンスの鬼。
ああ?!
なんだよ、キツネ。あぶねーって!ばか!逆手で! 殺す気か!
だぁぁっ!てめーはもういーからあっちで待ってろ!
あっ という間に戻ってきた。
かわいそうにねえ。
追い出されたかい。
アンタ無器用なんだなぁ。教えてももらえないくらいに。
それにしたって、花道にも言い方があるよなあ。
洋平?
ありゃだめだよ。
一番常識人な顔してっけどなあ、まあ、確かに一番常識人なんだが、こと、花道に関してはだめだ。
花道に一番あめえのは洋平だ。
もうはなしにならねえんだよな。
花道に洋平が説教なんてありえない、ありえない。
流川、なんか怒りもすっかりたけなわって感じだな。
気持ちわからねえでもないよ。
―――怖すぎて、なんにも声がかけられねぇ。
お、寝るか。
それがいいかもなぁ―――ん?高宮の方をなぜかじっと、高宮というより高宮のケツのあたりを。
座布団見てんのか!
あーあーだめだよ、今は、高宮は大楠と、盛り上がってッから、引っ張っても、ああほらな、ムダムダ。
重いんだよ、そいつは、見た目を裏切らず。
な?
諦めて、腕をおって、枕がわりにする。
それしかないだろうなぁ。
おっと、目があった。
「あんだよ、のま。」
「いっ?なんで名前・・」
「―――あんた、ガキんときからみてたネコに似てんだ。いろいろと。」
―――なに、その微妙な表現。
「猫、飼ってたんだ。」
「かってない。みてたつったろ」
「?」
「野良猫だ。」
読めて来たぞ・・
「―――なまえは。」
「のら。」
やはりな。
「しかもそいつ、はなのしたに、くろいしみがあって、あんたのひげみたいだ。」
「ひとの自慢のヒゲをシミ扱いしやがって!寝ろ寝ろー!」
ニッ
え、いま、わらった?
もういつものツラだが、見間違いだったとも思えねえ。うそぉ!笑うの?
そんなオレの軽い動揺なんて知る由もなく、台所の方をチラッとみたあと、ちょっとだけため息をついて眠りの国にいっちまった。
うーむ、このオトコ、奥が深い。
なかなかに。