屋上で寝ようとしたら、足のあたりがもぞもぞすっから、何だと見てみたら、しらねー女が引っ張ってた。
寝た後じゃなくてよかったと思った。
意識ねーときのおれは結構やばいらしいからな。
なんか用かと尋ねたら、好きなんだと言ってきたので、おれは好きじゃないと言ったら、泣いて帰ってった。
どうしろっつうんだ。
おもしろくねー気持ちを抱えつつ、もう一度寝ようと目を閉じたら、またしても足のあたりを、こんどは、蹴られた。
どあほうだった。
「んだよ。」
「泣かしたな。」
「フン。」
「・・・・・・なんでてめーはそうなんだ。」
「・・・・・・なにが。」
「なんでもっとこう人の気持ちを考えるとか、そういうの、できねーんだ」
これだもんな。
やってられっかよ。
なんでオレがしらねーやつの気持ちを考えてやらきゃならねーんだ。
そう言ったら、今度は殴られた。
やってらンねー!
おれも殴り返してやる。
結構強いやつだ。
テメーが悪い。
「なんでもっと、好きだっつってくる人間に優しくできねーんだ。テメーはなんでそんなに薄情なんだ!」
泣きそうな顔して叫びながら殴ってくる。
なんでテメーが泣くんだ。
誰のための感情だよ、それは。
コイツはもうぐちゃぐちゃだ。
「振るのに優しい人間ってどんなだよ」
「知るか!!!どうせテメーと違って好きだなんていわれたことがねーよ」
そう叫んでまた殴ってくる。
うんざりだ。
おれが誰かに好きだっていわれるたびに、どあほうは怒る。
優しくしろと言う。
気持ちを考えろとか、言葉を選べとか、破るな捨てるないろいろいう。
そんなのどれもオレの本心じゃねー。んなことやってられっかよ。
知るかってんだ。
好きだと言われたことがねーだと?
じゃぁオレはなんなわけ?
殴るのもばからしくなって、構えた腕を下ろした。
どあほうもおろした。
はぁはぁ言ってる。
こいつはばかだ。どあほうじゃねぇ、ばかだ。おおばかだ。
「ワケわかんねーよ。何でてめぇが怒るんだ。どうすりゃいいんだ。付き合えってのかよ。」
「・・・ちげーよ。」
「じゃぁ、なんだよ。」
「・・・優しくしろっつってんだ。」
「・・オレは、知らないやつに優しくなんかできねー。」
「なんでだよっ!」
「知らないやつはしらねえからだよ!!」
優しくしろだと?
おめえが優しくしてほしいのは誰なのか、おめーはそれをぜんぜん分かってねぇ。
そんなヤツにこれ以上なにが言えるんだ。
重い沈黙。
口をひらいたのはこのばかだ。
「・・・・テメーにはわからねーだろーよ。」
空気が変わった。
線を引きやがった。
そしてこのおおばかは、ひとつの視線もよこさずに、おれのいる場所からいなくなった。