メガネが割れた。
ちょっと、よそ見してただけなのに。
はっと気がついたら、目の前にあった電信柱にごつん、で、割れた。
あんまりだ。
高かったのに、このめがね。
ぼやけて前が見えない。
このままじゃ、学校にいけない。
行けたとしても、遅刻だ、
無遅刻無欠席が自慢だったのに。あんまりだ。
ちり~ん
わ、危ない!
なんだよ、この自転車、ベルの意味、分かって・・
「流川っ!!!・・・・(かなぁ?)」
あ、とまった。
胡散臭そうにみてくるなよ。石井だよ。同じクラスで、同じバスケット部だろ。
「ああ・・・・・・・めがねは。」
「この調子だよ。」
「ふう~ん、割れたの。」
「そう。流川。先生に言っておいてくれない?」
「部活、休むの」
・・・部活の前に授業があるよ。
「いや。時間かかりながらも行く!もちろん部活にも出る!」
学校には部活用の眼鏡もあるし!
こうなれば、せめて、無欠席は諦めない!
「乗れば。」
「え?」
「後ろ、乗れば。」
と、あごで、自転車の後部座席をさす。
「いいの?」
「かまわねえ。」
「おおおおじゃまします。」
ちりーん。
奇跡のようだ。
っていうか奇跡だ。
高い眼鏡だったが、われてよかったかもしれない。
流川のこんな親切に出会えたのなら。
ちりーん。
「ごめんな、流川。オレけっこう重いだろ。」
「・・・もっと重い奴もいる。」
「へー・・・」
ちり~ん。
「あいで!」
すみません・・・・あ、いまのって佐々岡?
ちり~ん
「なぁ、流川。ベルなんで鳴らしてんの?」
さっきから全然意味なしてないよね。
「この音、すき。」
ちり~ん
返す言葉が見当たらない。
ちり~ん。
流川がこいでくれる自転車の後ろに乗って。
俺はこれからも、授業中、身を呈して、君を守ると誓う。
ちりちり~ん
ぷっ、面白い奴。
この間抜けな音に誓う。
好きな人がいるとその周りの人もいとおしくなる。