違いの分かるオトコ

パンツがほしいなと思ったので、一人じゃつまんないし、三井サンを買い物に誘うことにした。
あの人って気にかけてないくせに、なんかシャレてんだよね。
センスがいいんだろうな。それにもう気心も充分すぎるほどしれてるし、一緒に買い物行くのは楽しそう。
ちょっと趣味はちがうけど、あんま細かいことは気にしないのね、オレ。
付き合ってと言ったら、「たまの休みになんでてめえとショッピングなんだ」と言ったけど、んふふ、それは想定内だよ。

「アンタしかいないんだよ。アンタ、違いの分かるオトコだしさ」
「…しゃーねーなあ。てめえもようやく分かってきたな。付き合ってやらあ。」

これだもん。
シンプルな人だよね。カンタンカンタン。
ってね、いま思えば甘かったよ。

当日、待ち合わせ場所に現れた三井サンは、なんかやっぱりこじゃれてて、オレの好きな感じだった。
でも、三井サンの方はというと、オレを見るなり開口一番、

「テメーのそりゃあなんだ?チョッキか?」

だよ。ありえないっしょ。

「チョッキはないでしょ、ベストと言って。」

一応訂正しておいたけど・・そこで初めて、嫌な予感がしたんだよね・・・。

パンツを選ぼうとひいきにしてる店に入った。
去年フンパツして買ったお気に入りのブーツは今年もまだいける。それにあいそうな短めの丈のパンツを見ていたら、「短いのはちんぴらみたいだよな」と言ってきた。 ちんぴらて、アンタがそれを言う?
なんか選ぶ気が失せて、店を出た。

もう服はいいやCD見ましょうと、タワレコに入った。
「オレあっち見てくるな」と言って、クラシックとジャズのコーナーに入っていった。あの人があっちに、何の用があるのかねぇ。 あれ迷ってんじゃねえのかなと思ったけどもう放っておくことにした。好きにしてよ。
オレのゴッドのジャケット見ながら、やっぱサイコウと思っていたら、いつの間にか三井さんが戻ってきていて、オレの手元をひょいと覗いてさ 「ちんちくりんなの聴くんだな」なんてこと言ってきて! 「オレのゴッドに何たることを!」と驚いて見たら、「なんだその半目は!」と騒ぎだしたので、CD買うのもやめにした。
もう、ジョーダンじゃないよ。

「テメー結局、何も買ってねーじゃねぇか」
「・・ダレのせいなの」
「ああ!?なんだ、そのいいかたは!オレのせいだってのか!?」
「もーいーよ。これからどうする?まだ時間あるし」
「もーいーとはなんだ。もーいーとは!・・・あいつんちにでも行くか」

切り替えが早いタイプなんだよな。
三井さんがそう言うから花道んちに寄った。
あいつんちが、すっかりお気に入りなんだよね。
花道の家に行ったらちょうど水戸がいて、珍しく前髪をおろしてさ、なんか新鮮、いい感じ。

「あー、来客中かー。わりいな、またくっからよぉ」

いきなり三井サンがそう言ったので、オレは、びっくりした。

「わははは、ばかなミッチーめ!」
「なんだと!?」
「三井サン、あれ水戸・・」
「うそおっ!?」

叫んで、それからガン見して、

「マジ水戸じゃんか!なんでなんで?」

目を真ん丸にしてかなり驚いている。
このひとってさぁ・・

「そんなジロジロ見ないで下さいよ。」

あ、水戸が珍しく照れている・・かは分からねえけど、いつもニコニコのあの鉄仮面が崩れたのは、たしか。へえ、意外。

「へぇー…今日のお前、なーんかかわいーじゃねーか」

三井サン・・

「よーへーはいつも可愛いぞ」
「花道マジやめて。」

顔を手で覆いながら、花道を押しやる。

「ワハハハハ!照れてるな、よーへー!」
「花道~・・」

な、なんか、いちゃこらしだしたぞ、こいつら。変な気分でふたりを眺めていると、三井サンが耳打ちしてきた。

「なあなあ、なんか今日の水戸って、やっぱ水戸っぽくなくね? なんでなんかな。やっぱ、学ランじゃねえってのが大きいんかな。不良っぽくなくなるんな、フツーの服着てっとさあ。 でもよぉ、夏も変わらず水戸だったよな?学ランきてねえのによォ、な、どうし」

もうそれ以上は耳をふさいだ。

おれはその晩、気付いたよ。
違いのわかるオトコはあの人じゃない、オレなんだってね。


3ばかの中にも、こういっちゃあなんですが、
おばかランクってのがあって、
一番えらいのが宮城君だと思います。
そのあとは・・・問題です。難問です。
四天王になると、ルカワが加わるんですかね。やっぱり。

リョーチン>花道>ミッチー=ルカワ
かと思ってるんですけど。
2007/11/13