たまごやきの夢(彼方さん)

流川は玉子焼きが作られていくのを見るのが好きだ。
今日もおれが作っているそばでじっと見ていた。

寝る前に「なんでなんだ」と尋ねたら、「くるっ、くるっ」と言った。
あいつの口から小さい「つ」が出たのがおかしくて笑っていたら、「サル」と蹴ってきた。
更におかしく、なんか可愛かったのでぎゅうっと抱いたら、明日も見ると言った。
つまり、いっちょまえに朝食のリクエストをしたということだ。

その晩、流川は夢を見た。
オレの作った玉子焼きにくるくるくるまれていく夢を見たんだ。
たまごやきのあたたかさとやわらかさに、自然と笑みが広がる。
でも笑いたくない。
なのに笑ってしまう。
それがいやだから、なんとかふんばるんだけど、どうしても笑ってしまうんだ。

「まだ、いいんだぞ」

遠くから聞こえてきたので、そうかいいのかと思って、もう我慢せずに笑った。
ずっとずっと笑っていた。
笑うルカワが可愛くて、可愛い可愛いとあたまを撫でた。
眠りながら笑う流川が愛しくて、愛しい愛しいとあたまを撫でた。
撫でれば撫でるほど、あいつが笑って。
可愛さが募りやがて胸に迫るほどになって、オレはちょびっと泣いたんだ。

朝起きたら、るかわの手がオレの頭を撫でていた。

なんだ。ルカワの夢だと思っていたのに。
オレの夢だったのか。